2023ふくしまチェロ・コンサート
無事終了しました。
500人に及ぶ出演者の皆様、1,000人に及ぶ聴衆の皆様、
素敵な空間を共有でき、ありがとうございました。

福島民報2023年5月22日掲載

 東日本大震災から暦が一巡する12年を経過した2023年5月20日(土)~21日(日)に、福島市のあづま総合運動公園メインアリーナに国内外のプロ・アマチュアのチェリスト500名が集結。被災地域の皆様にチェロ・アンサンブルを通して鎮魂と復興の調べを届けました。500人規模のチェリストたちが福島に集合してのコンサートは初めて。21日本番の日は福島市のハーフマラソン大会が開催されるなど、福島駅近辺の混雑がピークに達しながらも、チェロを背負って参加される出演者の皆さんの姿は本当に逞しくて、美しく、そこかしこでの久しぶりの対面を心の底から喜び合う姿が見られました。
 前日、20日の早朝から実行委員会を始め、あらゆる方面のスタッフが勢揃いし、それぞれの作業を開始しました。最も大変で時間がかかったのは、ステージとなるメインアリーナへの座席などのレイアウトです。仙台から参加された一級建築士のチェリストが、今回も獅子奮迅の働きを見せてくださいました。想定された総座席数をもとに事前に入念な設計図が何度も描かれ、その後の変動要素などを加味しながら、リアルなステージをデザインしていきました。チェロケースといえども、その美しさを演出する小道具だったのです。
 13時からスタートしたリハーサルでの響きは、本当に久しぶりの感触が蘇ったかのよう。チェロの心地よい音色が五臓六腑にずしんと響きわたり、大規模なチェロアンサンブルならではの重厚さを思い出させてくれました。プログラム順に「アヴェ・マリア」「チェロのためのレクイエム」とチェロアンサンブルの名曲を、マエストロの田中健先生は、それまでの10回の公式練習で魅せた巧みな指導を惜しみなく披露。この日が初めての全員集合であるにもかかわらず、見事にチェロアンサンブルの魅力あふれた世界観の中に全員を誘ってくださいました。
 中でも、どんなふうになるのか頭の中ではわかっていても初共演となる地元高校生(県立福島高等学校合唱団・福島成蹊高等学校合唱クラブ・県立橘高等学校合唱団)との初リハーサルは、実行委員はもちろん、すべてのチェリストたちを覚醒させるほどのエネルギーに満ちていたものでした。ゴールデンウィーク前にようやく歌詞付きの楽譜がお渡しできたようなスケジュールでしたから、さぞかし短期間に濃密な練習日程をこなされてのこの日だったのでしょう。朝ドラ主題歌の「星影のエール」や、福島市生まれの作曲家、古関裕而の類まれなる多彩なメドレー作品、さらには歌い継がれてきた東北の民謡と、およそ彼らのレパートリーを大きく逸脱するような作品ばかりです。「合唱王国福島」を強く実感させるほどのインパクトがありました。
  リハーサル後は、参加者にとってのお楽しみ企画、前夜祭。メインアリーナ2階のホールロビーを使っての開催でした。実は、このようなロビーでのパーティ開催は前代未聞だったようで、ちょっと大変でしたが、会場側のご協力で練習後すぐにパーティという図式ができました。コロナ禍を経てのこうしたイベントですので、本当に久しぶりの大人数。中でも田中健先生とゲスト奏者としてお招きした東京チェロアンサンブルのメンバーを囲んでのわきわきあいあいぶりは、とても心地よい時間となりました。東京チェロアンサンブルのメンバーのご挨拶をちょっと披露しましょう。
・清水詩織さん 「本当に久しぶりに皆さんと会えて、とても嬉しいです。実は新倉瞳さんとは同級生で、小学生からの仲でした。5、6年の時に一緒に神戸での最初のチェロコンサートに出演していました。それがチェロアンサンブルの魅力に触れた初の機会で、こういう大人数のチェロアンサンブルは私の原点です」
・高木慶太さん 「今日は皆さんと一緒に演奏できることを楽しみに来ました。500人の音ってどうなんだろうと電車に乗りながら思っていましたが、やはりすごいなぁと。田中先生の素晴らしい指揮で、明日も楽しみにしています」
・中実穂さん 「今回のコンサート、ずっと楽しみにしてきました。明日、皆さんと一緒に本番の演奏できることを楽しみにしています」
・堀沙也香さん 「東京の第1回公式練習に参加しました。その時は曲を知ろうということで全曲を練習したのですが、それ以来の今日で、皆さんすごくがんばってこられたなぁと。多分、皆さんがお互いに良い音楽の方向に向き合ってこられたんだなぁと感じました。明日は、500人で一つの音楽を奏でましょう」
・宮坂さん 「さっき、到着したところです。渋谷でN響の定期を演奏してきました。公式練習には1回参加しました。明日、ガンバリましょう!」
・宮田大さん 「チェロは集まりたがる、群れたがる民族だと思いますが、今回もそれが実現しましたね。リハーサルに参加できませんでしたが、新しい曲に向かって田中先生の指揮と後ろからくる皆さんからのリズム感でパワーをもらっています。今日のリハーサルは、その皆さんからのテンションに合わせようと探り探りでしたが、明日の本番はテンション全開でいきたいと思います」
・横山圭さん 「川崎での最後の公式練習に参加しました。100人のアンサンブルで、わけがわからないくらいの時間でしたが、今日は、とにかく楽しかったです。明日も楽しいと思います」
・新倉瞳さん 「すみません、今日は声が出ませんので筆談を三宅さんに読んでいただきます。このように声が出なくてもメンバーやたくさんのチェリストの皆さんたちと一緒に演奏できるのは、音楽だからだなぁと思います。今回、500人の皆さんと1対1で話すことはできませんが、チェロアンサンブルなら一緒に音楽ができますね。ありがとうございます」
・三宅依子さん 「こういう動物園みたいな状態ですが、このあと荒井結さんも参加して、明日は朝9時から本番会場で『レ・ミゼラブル』のリハーサルをいたします。見学される方は、撮影はできませんが、生の音を感じていただければと思います」
 この日、会場側からのパン1斤プレゼントなど、破格のサービスもあり、パーティはお開きとなりました。初日はこんな感じで終わりました。
 そして翌日のコンサート当日。福島市ハーフマラソンの影響もあり、福島駅周辺のホテル滞在の皆さんには、用意したバスが7時〜7時半の間に出発という時間差作戦に協力いただきました。ですので、早い方は7時半くらいから会場に集結。前夜の疲れもなんのその、気合十分の笑顔がどんどん会場入りしました。

まったく新しい形のチェロアンサンブル体型となりました

 22日(月)にキャラバンに参加するメンバーはサブアリーナに移動し、演奏地域別に7つのグループに分かれ、円陣を組みました。何せ初顔合わせがほとんどです。パート順に10数名が並んで、自分たちのメンバーの確認をし合いました。そして、その7つの円の中央で田中先生が指揮をされる、という段取りです。
(続きは、後日)