キャラバン実施報告

CARABAN REPORT

500人チェロ・コンサートの翌日、福島県内の各地区へ。

 5月21日(日)のコンサートの翌日の5月22日(月)、浜通り地区・中通り地区・会津地区での7ルートに分かれて、チェロ・キャラバンを開催しました。大変遅くなりましたが、それぞれの実施報告です。

南相馬ルート

※当初予定していた原町共生授産園でのキャラバンが中止となり、急遽、カトリック原町教会でのキャラバンを追加しました。

南相馬ルート キャラバン概略

 

参加メンバー ( )内はパート名
田中健先生(指揮)、木村直子(1)、澤英之(1)、戸田裕二(1)、藤原ケイ子(2)、中村秀美(2)、仲麻理子(2)、大友弘道(2)、田中智子(2)、渡辺ルリ(3)、村井玄(3)、村井ゆりこ(3)、中井純子(4)、白沢史子(4)

 

①メンバー 澤英之さんのレポート

 
 「2023ふくしまチェロ・コンサート」の翌日5月22日(月)参加者の有志で7グループに分かれて、福島県内23か所でキャラバンコンサートを開催しました。私たち13名は、浜通り・南相馬ルートで、4ヵ所(カトリック原町教会、さゆり幼稚園、太田小学校、同慶寺)で演奏会を開きました。
 
 最初の教会では、演奏後、信者さんの代表の方から被災した時の当時のお話を丁寧にお伺いすることができました。
 
 幼稚園では、子どもたち元気いっぱい、身体でリズムを感じ、「となりのトトロ」と「さんぽ」は大合唱になりました。最後に楽器に触れる楽器体験をしたら、希望者がたくさんいてとても好評でした。
 

 小学校では、子どもたちは熱心に聴いてくれて、素敵な感想を聴かせてくれました。帰りにはバスまでお見送りをしてくれました。

 最後の同慶寺は、原発から北西に約17kmの位置にあり、原発事故の時には、住職、檀家とも県が避難を余儀なくされて大変な経験をされている寺です。本堂で開催された演奏会には、指揮の田中健先生が、合流して指揮をしてくださりました。 お客様の中に音楽家や合唱団の皆さんがたくさんおられて、前日高校生の合唱団が歌った、「星影のエール」「古関裕而メドレー」「となりのトトロ」「さんぽ」では、打ち合わせもなかったのに美しい歌声が響き渡り、演奏者とお客さんが一体となった暖かい素敵な演奏会になりました。「ふるさと浪江」を演奏したときは歌いながら涙を流す方もおられ、こちらまでもらい泣きしてしまいました。

 プログラムの最後に「ふるさと」をみんなで歌ったのですが、アンコールの拍手が止まらず、田中先生から今日演奏した曲から、「もう1度聴いてみたい曲は?」とお伺いすると『「ふるさと」をもう一度歌いたい。やっと私たちも「ふるさと」を歌える心境になってきたのです』とおっしゃったのが、すごく印象的でした。
 
 アンコールの「ふるさと」は、田中先生の提案でピツィカートを入れたりして、少し演奏をスタイルを替えながら、3番まで歌いました。本当に心に残る演奏会になりました。

 
 

②実行委員でメンバー 木村直子さんのレポート

 

 朝7:30頃メンバー12人を乗せて、福島駅をピンクのバスに乗って出発。運転手は川名さん。
 まずメンバーの自己紹介から。福島の復興に心を寄せていたこと、キャラバンは初めて、チェロアンサンブルの楽しさなど、それぞれの思いや意気込みを語り合い、和気あいあいと走行。
 途中のSAでは、みんなでお揃いのターコイズブルーのTシャツを着ているため、職員の方に声をかけられた。慰問演奏に行くのだと伝えると「最近はそういうことが少なくなってきてたから嬉しいよ」と言っていただけた。
 
カトリック原町教会
 本来「原町共生授産園」に訪問する予定だったが先方の都合により中止となったため、急遽代替地としてご用意いただけた。そのお世話をしてくださったのが、カリタス南相馬の南原摩利さん。この日一日我々とともにバスに同乗して各訪問地で仲介してくださった。ついでに図々しくカメラ撮影もお願いした。教会にて13人目のメンバー大友さんと合流。

 カトリック原町教会に到着。地元の方の愛着を感じる、可愛いらしくも清廉な雰囲気。お客様はシスターや信者会長さんや、なんと昨日の演奏会で一緒に演奏した参加者など。演奏後、お客様からお話しを拝聴できた。「原っぱが広がるいい所ね、と言われて、でもそこには住宅地があったのだと、悲しくなる」「各地を転々とし北海道まで子供を連れて逃げた。福島に帰ってきたら、避難できてよかったねと言われた。子供に食べさせるために必死だっただけなのに」今も被災している最中なのだと痛いほど伝わった。

さゆり幼稚園
 カトリック原町教会のすぐお隣のさゆり幼稚園へ。元気な子供たちが出迎えてくれた。ワクワクしている気持ちが伝わり、演奏もハズむ。となりのトトロやさんぽでは、チェロの音がかき消されるほどの大合唱。めっちゃ可愛い。楽器体験コーナーを実地したが、園児の希望者が多すぎて、メンバー13人全員で4~5人ずつ体験していただいた。最後には園長先生も。先ほど教会でお話しを拝聴した後だっただけに、子供の声が大きく響く園内は、希望に満ち溢れているようで嬉しく思う。

 
 お昼休憩はたったの30分。ガイドブックには道の駅なみえにて「浪江焼きそば」がおススメとあったが、食堂のおばちゃんに焼きそばは10分かかるといわれ、13人分は無理か…と泣く泣く断念。
 
太田小学校
 なんと、ターコイズブルーのTシャツを着た佐々木校長先生がお出迎え。体育館にて生徒の皆さんとご近所の方や先生方が聞いてくださった。生徒の皆さんはとてもお行儀が良く、曲に合わせて手拍子をしてくれた。質問コーナーがあり、「どうして馬のしっぽの毛で音が出るの?」「チェロって僕でも買えますか?」など鋭い質問があり、真剣に聴いてくれていたことが伝わった。最後には感謝の言葉と「ありがとう」と書かれたメッセージを頂戴した。別れ際に「また来てね~」と可愛いくお願いされた。そんなこと言われたら、また行かなきゃね~。
 太田小学校のHPでは即、我々のことを記事にしていただいた。

 
同慶寺
 同慶寺にピンクバス到着と同時に田中健先生も浪江町からタクシーにて到着。趣ある立派なご本堂にて、イケメンのご住職のご挨拶から演奏会スタート。田中先生の指揮は、前日からの演奏会で培った信頼感で安心な演奏となった。また軽快なトークでお客様を盛り上げてくださった。そして堂内では、チェロに合わせて綺麗な歌声が響く。お客様にコーラスグループの方々が来場していて、古関裕而や東北民謡も完璧に歌ってくださった。「ふるさと浪江」では観客が涙する場面も。指揮者体験コーナーではご住職が立候補いただき、のびやかな指揮にメンバーもお客様もほっこり。アンコールを頂戴したが田中先生が、何がお聞きになりたいですか?と尋ねたところ「やっと『ふるさと』を歌える気持ちになれたから」と…。

 演奏後は、皆様とお茶をいただきながら、まったりおしゃべりさせていただいた。ここで地元の大友さんとお別れ。

 ピンクバスで同慶寺の最寄りの常磐線の駅に到着。一日お世話になった南原さんと一緒に木村も下車。田中先生とメンバーの皆さんはこのまま福島駅までバスで移動。楽しく帰郷される様子をグループLINEにて共有。
 
 たった一日。キャラバンでできた即席のアンサンブルだけれど繋がりが深く、メンバーはとても仲良くなった。キャラバンの楽しさと訪問地の切実な想いを胸に、南相馬ルートを無事に終えることができた。